『文化人・芸能人の多才な美術展』出品者の声

■福田直樹さん

Q1.『文化人・芸能人の多才な美術展』実行委員会

最初に、当美術展へご参加いただき、誠にありがとうございます。当美術展は、文化財保護・救済活動支援チャリティーを趣旨とし、今年のテーマは「顔は人生のキャンバス」 としました。こうした趣旨やテー マについて、どのようなご意見をお持ちでしょうか。

A1. 福田直樹さん

「顔は人生のキャンバス」という今回のテーマの通り、人の顔にはそれぞれが歩んできた道のりや経験が、時間をかけて刻まれいくものだと思います。
それと同時に今現在のその人の調子や状態もはっきり現れるのではないでしょうか。
私はスポーツ、特にボクシングを題材にして写真を撮っていますが、 その核になるのもやはり顔です。その人が戦っている意味や人生における現在地を残すためにも、ボクサーたちの表情と感情、その顔に刻まれてきた年輪をありのままに捉えたいといつも考えています。

Q2.『文化人・芸能人の多才な美術展』実行委員会

続いて、出品作品について、制作のエピソードをお話ください。作品へのこだわり、制作上で苦労した点などの説明をお願いします。

A2. 福田直樹さん

今回出展させていただいた3枚は、いずれも今年の春、日本のボクシング史上最大のタイトルマッチを実現させた村田諒太選手の写真です。WBAミドル級スーパー王者の村田選手とIBF同級王者ゲンナジー
・ゴロフキンの王座統一戦となったこの試合は4月9日、さいたまスーパーアリーナで行われましたが、私自身が50年以上ボクシング見てきて、ゴロフキン・レベルのスーパースターが日本の選手と戦う
ために来日するのはこれが初めてでした。村田選手の方は、日本人ではとうていたどり着けないと言われていたオリンピックのミドル級金メダルを獲得して、プロでも世界王者になった日本のエースです。
私自身、アメリカに住んでいた頃にゴロフキン選手のタイトルマッチは9度撮影していて、当時、もっとも重要な取材対象でしたし、村田選手もプロデビュー前、ラスベガスのキャンプを撮らせていただいてからずっと応援し続けてきました。

ですので、私にとりましてもここ10年ほどの集大成のような撮影でした。結果はゴロフキン選手の9ラウンドTKO勝ちでしたが、村田選手が何度もいい場面を作り、我々に大いに夢を見させてくれた歴史的名勝負でした。
顔の写真は、この試合の公式ポスターにも使われたもので、村田選手の目の力、顔全体に現れた経験値、試合への覚悟を至近距離で感じながら撮影したものです。ホテルのボールルームに2時間かけてスタジオを組んで撮りました。
村田選手の右ストレートの写真は、TKOラウンドとなった9ラウンドの最後の反撃です。同ラウンド前半に一度村田選手がピンチに陥ったのですが、そこから右強打で劇的に逆襲したシーンでした。私も魂をこめながらシャッターを押し続けました。 村田選手らしいショットになったかと思います。
もう一枚の写真は、試合後、ゴロフキン選手が村田選手の健闘を讃えて自分のガウンをプレゼントしているところですが、ボクサーが相手にガウンをプレゼントするのを見たのはこれが初めてです。ゴロフキン選手のガウンは カザフスタンの民族衣装を模していて、豪華な刺繍が以前から目立っていましたので、さらに印象的な場面になりました。この直前まで私のカメラポジション前にはリング上の関係者が集まってしまっていて、二人の姿が全く 見えなかったのですが、この瞬間2、3秒だけ隙間ができて視界が開けました。自分の戦いに満足したような村田選手の一瞬の表情と、ゴロフキン選手の顔が腕の間から覗いたタイミングが奇跡的に一致しました。
自分にとりましてもとても大切な一枚です。

Q3.『文化人・芸能人の多才な美術展』実行委員会

当美術展にご参加いただいた想い、期待していることなどをお話いただけますか。

A3. 福田直樹さん

今年もこの素晴らしいチャリティー美術展に出展させていただき、たいへん光栄に感じております。
様々な分野でご活躍されている方々の作品を間近で拝見し、感激すると同時にインスピレーションも受けております。
今後も参加させていただけましたら幸いです。

Q4.『文化人・芸能人の多才な美術展』実行委員会

今後も当美術展に参加していただきたいと思っていますが、もしも次に出品するならどんな作品を公開していただけますか。もしくは、どんな作品制作にチャレンジしてみたいとお考えでしょうか。

A4. 福田直樹さん

あまり知られていないかもしれませんが、いま日本のボクシング界にはかつてなかったほどに素晴らしい選手が揃っています。
その筆頭は井上尚弥選手や村田選手ですが、ほかにもたくさんのトップボクサーがいます。この先どのような写真が撮れるか分かりませんが、現在のボクシング界の活気やレベル、ボクサーたちの魅力が感じられるものを撮れればこれ以上のことはないです。

Q5.『文化人・芸能人の多才な美術展』実行委員会

最後に、ファンの方々に向けたメッセージをお願いします。

A5. 福田直樹さん

命懸けの戦いを安全な場所から撮らせていただいているので、これからも目の前の一試合一試合を大切にして、全力で撮影を重ねていきたいです。今後ともよろしくお願いいたします。

■福田直樹 プロフィール

1965年東京生まれ。ボクシング・カメラマン。1988年より『ボクシングマガジン』の編集にライターとして携わり、2001年に渡米。カメラマンに転向。 以後はネバダ州ラスベガスに拠点を置き、全米各地で年間約400試合を撮影し続けた。パンチのインパクト、決定的瞬間を捉える能力を本場で高く評価され、『パンチを予見する男』とも称される。 2008年、世界で最も権威がある米国の専門誌『リングマガジン』にスカウトされて、同誌のメインカメラマンを8年間務めた。
『BWAA(全米ボクシング記者協会)』主催の年間フォトアワードにおいて、初エントリーから6年連続で入賞し、その間に”最優秀写真賞”を4度受賞。 2012年にはWBC(世界ボクシング評議会)の”フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー”にも選ばれている。 2016年に帰国。現在は米国での経験を活かして、日本のボクシング、ファイターの写真を世界各地へ発信する活動に取り組んでいる。